神田市場 プロジェクト#2
北海道・函館 噴火湾の漁船「龍神丸」が捕る命懸けの”赤ガレイ”



北海道・函館空港から車で約2時間半、噴火湾に位置する”落部(おとしべ)”。

「育てがいがある・・・たまごっちみたい(笑)」と言われる夫・勇樹さんと、

「魚のこと、漁師のことをもっと知ってほしい」と東京から函館へ移住してきた妻・志保さん。

漁師×元看護士という異色な組み合わせの”舘岡夫婦”を取材した。

函館の漁師×東京の看護師


▲「龍神丸」の漁師である夫・勇樹さん(左)・「龍神丸」のサポートを行う妻・志保さん(右)

そもそも、東京で看護師をしていた妻の志保さん。

どんなきっかけから、漁業へ興味を持ったのだろうか。

志保さん 「親戚が函館で漁業をやっていて。ふと、魚って誰かが捕ってるけど、そういう目線で見たことがないな、と。
当時、野菜は有機とか無農薬っていうワードが流行っていたけど、魚のことは全然知らなかった。」

たしかに、小学校や中学校の授業で野菜を育てることはあっても

漁を経験した人はあまりいないだろう。”漁師”に対するイメージも偏っているのではないだろうか。

志保さん 「漁師っていうもの自体を誰も知らないし、どっちかっていえば怖くて敬遠するじゃないですか。
”ねじりハチマキ巻いてるんでしょ~”とか言われますけど、そんな人いません(笑)」
勇樹さん 「いないよね(笑) 酒飲みでね、昼から飲んでるイメージもまだある。」
志保さん 「そのイメージをまず変えて、身近に感じてもらうところからですね。
そうすれば、もう少し魚や漁師への興味を持ってもらえると思います。」

閉鎖的な水産業界をもっと開放し、多くの人に漁業を知ってもらいたい。その強い想いから、志保さんは東京から函館への移住を決意したそう。

勇樹さん 「”函館に行くから”っていうから、てっきり観光かと思ってて。そしたら”引っ越すから。
中古車も買ったし、家も売ったから。”って。気が付いたら津軽海峡渡ってきたんですよ(笑)」

・・・恐るべし、志保さんの行動力。

この行動力こそ、”龍神丸”を突き動かすエネルギーとなっている。


噴火湾の漁業の現実


▲北海道・八雲町の落部(おとしべ)漁港の様子

北海道といえば魚介類に限らず、食べ物がおいしいことで有名だ。正直、「北海道」という表示を見て安心して魚を購入する人も多いだろう。
それぐらい、北海道の魚介類は信頼できる。

それでは、函館・噴火湾の名物とはなんなのか。答えられる人は少ないかもしれない。

志保さん 「函館の人は、あんまり道外に出したがらない傾向にありますね。」

なるほど。だから答えられないのか。

勇樹さん 勇樹さん「函館の漁師、ダメなんだよ。自分で魚を売りたいんだけど、どうやっていいかわからない。
って話を(志保さんに)したら、”そんなの私だったら余裕だよ”って。」

当時、落部漁港では全量を組合に出荷していて、自分で送るという考えもなかったそう。

勇樹さん 「いざ私が、こういうふうにしたいな~って悩んでいたことが、あっという間に形になっていくんです。
このお店に魚を卸せたらいいな~と言ったら、一週間しないうちにアポをとってきた。」
志保さん 「全部SNSのメッセージを勝手に送り付けて(笑)」
勇樹さん 「みんな言うよね、いきなりそういうメッセージが送られてくるから”詐欺かと思った”って。」

・・・やはり恐るべし、志保さんの行動力。

志保さん 「実際に会ってみて、みなさん共通しておっしゃるのが”漁師さんに会って、想いを聞いてから決めます”と。
私はあくまでも”入口”なんです。
それで(勇樹さんが)来ると、大抵決まっちゃう。なんか、みんなが育ててあげたいと思う・・・”たまごっち”みたいな感じ(笑)」
勇樹さん 「そんなかわいいもんじゃないけどな(笑)」
志保さん 「敬語も話せない、何もできない。そんな人が無理くり頑張って敬語を話そうとしてる。」
勇樹さん 「”漁師はそれでいいんだよ”って言ってくれる人がすごく多くて。」

志保さんの行動力もすごいが、勇樹さんの人柄の良さも、恐るべし。


ECサイトで魚を購入するお客様ってどんな人?

▲函館駅からすぐ近くの「函館朝市」の様子

昨今の”ECサイト”の競争はものすごく激しい。コロナ禍における”ステイホーム”の影響も大きいだろう。
テレワークが増え、家にいる時間が多くなった人たちの中には料理にこだわる人たちもいるのではないだろうか。

”龍神丸”でも、約5つのECサイトを利用しているそう。

志保さん 「ECサイトのお客様は、30代~50代が圧倒的に多いです。
インターネットを使うから若い人も多いかと思ったけど、そうでもない。」
勇樹さん 「食べ方がわからないっておっしゃる方が多くて、調理方法の冊子とか入れた方がいいのかな、と思う。
でも正直、ネット注文してくれるくらいのレベルだから、自分でネットで調べられると思ってた。
そうじゃなくて、”どうやって食べたらいいですか”っていうのが結構多かったです。」

ネットで何でも調べられる時代だからこそ、実際に魚を捕っている漁師の言葉が一番安心なのかもしれない。
今後は、調理方法をまとめた冊子を同封することを検討しているそう。

客層を広げることも、ひとつの課題だ。若者の層を広げるためにはどうすれば良いのだろうか。

志保さん 「最近の若い方は、魚の骨を取るのも嫌だって人が多くて。」

家で魚の調理をすること自体の手間もあるが、食べるときの手間も確かにある。

その手間をかけてでも、命懸けで捕ってきたおいしい魚を食べてほしい。

そのためにまずは”知ってもらうこと・興味をもってもらうこと”が重要だ。


「龍神丸」の魚が食べられる!居酒屋「海男(うみおとこ)」

▲お店の前にある、力強い看板

舘岡夫婦オススメの居酒屋で、一緒に食事をすることに。

▲函館の地酒「郷宝(ごっほう)」と「五稜」で乾杯

函館の地酒が置いてあるとのことで、2種類で乾杯を。

我々は飛行機の時間の都合上、30分程しかお店に滞在できず、ものすごくスピーディーな宴会となった。(今度はゆっくり伺いたい)

スピーディー宴会のため、さっそく”龍神丸”が卸しているカレイのお刺身を。

▲”龍神丸”が卸している赤ガレイのお刺身
▲ソウハチガレイのお刺身

そもそも、カレイのお刺身はあまり見かけない。今回なぜ食べることができたのか。

それは”新鮮でおいしいから”である。

そびえたつカレイ。通常のお刺身と、炙ったお刺身。盛り付けが美しく、わさびのコロっとしたフォルムも可愛らしい。

言うまでもなく、味は絶品。ECサイトで購入する人の気持ちがよくわかる。

この味を函館以外の場所で食べられる現代に感謝しかない。

実際に漁港へ行き、漁師の話を聞き、魚をいただく。

目、耳、舌で噴火湾の名物”カレイ”を堪能させていただいた。

漁の話や魚への想いを知っているのと知らないとでは、きっと感じる味も違うだろう。

とても貴重な経験をすることができた。

スピーディー宴会のため、料理もお酒もここまで。早すぎる。

本当に時間が足りなかったので、今度はゆっくりと他の料理やお酒を楽しむことを誓った神田市場一同であった。

▲舘岡夫婦

終始、なごやかな雰囲気でお話しをしてくださった舘岡夫婦。仲の良さが垣間見え、こちらの取材に対応していただいた。

舘岡夫婦の”熱い想い”を、神田市場から全国に発信していく。

もっとたくさんの人に、漁師や魚を身近に感じてもらえるように。

スーパーで魚を買うときに、「漁師って、ねじりハチマキ巻いてないらしいな。」って思い出してもらえるように。

魚を食べるときに、「この魚はどんな人が捕ってるのかな?」と思ってもらえるように。

食べ終わったあとに、「また食べたいな。今度は何を食べようかな。」と考えてもらえるように。

神田市場では、噴火湾名物”赤ガレイ”の他、新鮮な魚を冷凍でお届けいたします。

勇樹さんが命懸けで捕った魚を是非一度、ご賞味あれ!